南足柄の小高い丘の上、
もとはミカン農園だったという足柄平野を見下ろす眺めの良い空間に
小田原出身の相原海さん(43歳)が2002年に開墾し、
研修先で譲り受けた4頭の養豚から始めた農場「こぶた畑」があります。
大雄山駅から車で10分ほどの住宅街にも近い環境で、地場&自給の小規模養豚を行っています。
南足柄の丘の上、穏やかな時間が流れる養豚場
土木の経験もある相原さん自ら建てた風通しの良い豚舎には
現在、3頭の母豚も含めて48頭の豚たちが、
剪定枝のチップやもみ殻が敷かれたフカフカの発酵床の上で過ごしています。
生まれたばかりの赤ちゃん豚は母豚と一緒の空間で、甘えた声を出しながらおっぱいに吸い付いつき、
成長した豚たちは月齢ごとに区画に分けて。柵が低く開放的で、豚が逃げてしまわないのかと思うほど。
鼻を上手につかって土を掘り返したり、初対面の私たちにも愛嬌を振りまいてくれたり、表情も穏やか。
時々、ジョジョ~っと元気に排尿もしますが、不思議なことに全くにおいも気になりません。
相原さんが目指す【地域循環型養豚】とは
相原さんによると、日本の一般的な養豚産業は
小規模な家族経営だとしても、ふん尿を処理する浄化槽設備などの初期投資が必要で、
少なくても1500頭もの養豚を飼育しなければ安定した経営が難しいそうです。
「養豚をやりたい」という想いがあっても、こういった環境では
一頭一頭に愛情をかけて世話をする理想との差があったり、
新規開業するにはリスクも大きかったりと、後継者不足にもつながってしまいます。
一方、「こぶた畑」では地域との関係を密にした小規模での養豚を行うことで、
養豚たちをストレスフリーな環境で飼育できるだけでなく、
必要な経費やエネルギーを最小限に、環境負荷も抑えることができるそうです。
例えば、
〇ふん尿の処理…
一般的な豚房よりも約4倍の広さが必要になるものの
発酵床で落とされた排泄物が微生物によって分解されるため、地元の農家さんなどが堆肥として役立てることができます。
〇飼料…
地元酒造店の酒粕や国産小麦のうどんくず、パンの耳やかまぼこなど
地域のお店屋さんで譲り受けた食品残さを、栄養価を高めて保存が効くよう発酵飼料に。
昨今特に高騰している輸入飼料に頼ることなく、生産現場での環境負荷や輸送にかかるエネルギーなども抑えることができます。
〇販売方法…
売れ残りのリスクを避けるため、地元あしがらエリアの家庭を中心に定期購入制で販売。(週1回、隔週宅配)
1頭の豚から取れる肉のすべてを余らせずに売り切るため、部位はお任せ。ブロック肉での販売。
飼料もお肉も、堆肥も。どれも顔の見える範囲の地元で循環され、
まさに地域の中で豚が巡る【地域循環型養豚】が出来上がっています。
近年、食品ロスについて話題になることがありますが
「目の前にある食品だけでなく、
生産過程におけるトータルの環境コストについても目を向けてほしい」と相原さん。
エネルギー問題にもつながる“地元の食材を選ぶこと”の大切さを、改めて考えさせられます。
なお、「こぶた畑」さんのお肉は風味豊かで、
脂もしつこくなく甘さを感じ、豚肉特有の臭いもありません。
高級品としてではなく、普段の食卓で味わってほしいという想いから、頑張れば普段使いできる価格設定。
現在、定期購入は定員となっているため、キャンセル待ちの予約は受け付けているそうです。
農場こぶた畑
南足柄市苅野347
https://www.facebook.com/kobutabatake/